『陰翳礼讃』で谷崎潤一郎が羊羹に喩えたように、闇は厚みと奥行きをもつ空間である。私はその闇の中で、視覚に頼らず見えない存在を探るように描く。身体の感覚を研ぎ澄まし、触れ、記録することで世界との摩擦を生み出す「Drawing in the Dark」は、鈍化する身体感覚への抵抗であり、存在を確かめる行為でもある。闇の中で境界を曖昧にしながら、身体の痕跡を刻みつける。
本作は、現代社会を生きる個人とその環境との関係性をポートレートとして描いてきたシリーズ「Bitten from Within」および「Digital Flowers Produce No Seeds」を融合させた作品である。「過剰な自己抑制と抑圧」、「仮想的な報酬への依存」、「仮想的な社会的承認の追求」といったテーマについて、作品を通してご一考いただきたい。
2025 Exterior paint, mixed media on canvas φ455×20mm